長野市・小布施町の代表団がトゥルク市を訪問:気候変動に直面した際のレジリエンス(回復力)に注目

トゥルク市ミンナ・アルヴェ(Minna Arve)市長を囲む、トゥルク市、長野市、小布施町の国際都市間協力(IUC)プログラムのチームメンバー。
(写真提供:トゥルク市)

 

2019年11月、長野市と小布施町(共に長野県)の代表団が、バルト海沿いに位置するフィンランド・トゥルク市を訪問しました。これらの3つの自治体は欧州連合のイニシアティブで実施されている国際都市協力(IUC)プログラムのペア都市として交流を行ってきました。

長野市と小布施町は、トゥルク市訪問直前の10月半ば、過去最大級の台風ハギビス(19号)の影響を受けて大量の雨が降り千曲川の水面が上昇、水が広い範囲に流れ込み、大きな被害が出ていました。代表団の参加者も直接的な影響を受けており、トゥルク市にも報道により、災害の様子が伝わっていました。トゥルク市も雨による突然の洪水の経験があることから、今回の交流では、交流テーマである温暖化対策、再生可能エネルギー、資源の持続可能な利用のほかに、気候変動の影響による極端な気候現象に地域が直面した時、無防備な地域社会はどのように対処するべきなのか、レジリエンス(回復力)の高いコミュニティをどのようにつくっていくのか、極端な気候の変化によるこれまでの経験についても議論が行われました。

長野市と小布施町は日本の中央の山に囲まれた地域であり、トゥルク市はバルト海沿岸の平坦な土地に位置しています。両地域には多くの森林があり、木材やバイオマス資源の持続的な活用に取り組んできました。エネルギー資源、炭素の貯蔵、複雑な生態系の構成など、森林は社会の中で複数の役割を果たしています。さらに、市民に雇用の機会や休息の場も提供しています。

トゥルク市が実施するサステナビリティ政策は、スマートな資源利用、カーボンニュートラル、循環経済を重点にしています。日本からの代表団は、今回、その複数の取り組みを視察しました。Topinpuisto循環経済パークでは、先進的な繊維リサイクルの技術開発の現場を見学しました。また、トゥルク市が運営している市内中央部の地下の岩盤の中にあるKakolanmäki下水処理場では、そこで回収された熱を住宅の暖房に、汚泥はバイオガスの生産に使用しているプロジェクトを訪れました。トゥルク市をフィンランドの中で最も二酸化炭素排出量の少ない自治体にすることを目指しているTurku Energiaエネルギー会社では、その代表的な取り組みであるNaantaliマルチ燃料コージェネ施設を見学しました。この大型地域暖房施設により、石炭からバイオ燃料への切り替えが着々と進められており、コージェネ施設から地下のトンネルで暖房用温水をトゥルク市に送り、寒い気候の中で、住宅を暖め、快適な室内環境を維持しています。

トゥルク市役所でベジタリアンやビーガン料理の昼食が提供されたことにより話題が食べ物となり、3つの自治体は、農業イノベーションや農作物も共通の関心分野であることを発見しました。小布施町では果樹農家から出る有機廃棄物をエネルギー源として使用されており、長野市では乾燥に強い信州産ソルガムを新しい農作物として開発しています。また、トゥルク市民の間では、肉の生産を要因とする温暖化ガスの排出についてよく知られていますが、日本ではあまり話題になっていないことが指摘されました。さらに、トゥルク市は、「Flavoria食事体験センター・リビングラボ」において実際の生活の場を現場にして実施された研究の結果を紹介しました。この研究では、消費者に食べ残しデータを提供したり、食事をする部屋で音楽を流したり、壁の色を変えたりすることで食習慣がどのように変化するのか研究されました。

2020年春、トゥルク市は、長野市と小布施町を訪問する予定でしたが、新型コロナウィルスの世界的流行の影響で延期になっています。その代わり、ウェビナーを通じて、学び合いを継続しています。さらに、若者や市民を対象にした温暖化の進行を止めるためのライフスタイルを提案する動画コンテストの共同実施を企画しています。

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原文: Lena Lindahl

(記事公開日 2020年11月17日)